母の瓶集め趣味

私の母には、軽い収集癖がある。
中学生だか高校生くらいの時には、飴のつつみ紙を丁寧に伸ばしてとっていたそうだ。
そのコレクションは今はもうないが、今でもそれを取っておけばよかった、と時々言っている。

母の実家に遊びに行ったときには、どうやら修学旅行に行った先で買い集めたと思われる、観光地の絵葉書が箱一杯につまったものを見つけた。
行った先の地図やパンフレットまでが同封されていたのを見て、母の物持ちのよさに舌を巻いた。
とてもずぼらな私の母親とは思えない。
とにかく、昔から何かを集めるのが好きだったようだが、それも最近ではすっかり下火だ。
大人になって、引越しをしたりするにつれ、ものをあまり増やさないようにする、というのを心がけるようになったそうだ。
それでも私から見たら十分たくさん物があるのだが。
だから、収集癖もおさまってはいるのだけれども、そんな中でもどうしても抗えないらしいものが一つある。
それが、瓶集めである。
瓶と言ってもなんでもいいわけではない。
飲料用の瓶や、花瓶みたいなものではいけないのだ。
彼女が好むのは、密閉式の保存瓶である。
というわけで、うちにはいくつも保存瓶がある。
ずらっと並べてキッチンの棚に置いてあるのだ。
母は、その中に飴やラムネ、チョコレートなんかのちょっとした小さなお菓子を入れておく。
カラフルなお菓子たちが、透明な瓶に入って並んでいるというのは見ていてもとても可愛らしい。
ちょっとしたコンフェクショナリーのようだ。
けれども、一度瓶に入れてしまったお菓子は、食べられることが殆どない。
瓶に入れて満足してしまったら最後、存在自体を急速に忘れてしまうのだ。
言って見れば、風景の一部と化してしまって、注意をひくことがなくなる。
だから家の瓶に入っているお菓子たちは大抵賞味期限切れである。
飴なんかはひと夏超えて、溶けたものが再び固まっているだろうし、チョコレートに関しても多分一度脂が分離している。
保存瓶に入れるのが逆にもったいない、というのも珍しい話だけれども、おそらく母はその件に関しては無頓着であろう。

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