あぶない発言

本当だったらその場にふさわしくない発言を、ふさわしくないと分かっていながら言わずにはおれない衝動に駆られる、という心の病があるというのを、前に何かの本で読んだ。
小説だったと思うけれど、精神科医の先生が書いた本だったから、実際にそういう症状はあるのだろう。
例えば、結婚式なのにご法度の「別れる」ということを言ってしまったり、神妙な席で突然大声を出して走り出したくなる、そして、それを実際にやってしまうなんてこと。

でもこういうことは、多かれ少なかれ人の抱きやすい感情ではないだろうか。
言ってはいけないこと、やってはいけないこと、そう教えられてきたことを、あえてやってみたくなる。
やってみたら、皆がどういう反応をするだろうか。

要は子供のいたずらと同じようなものである。
怒られると分かっていながらやらずにはいられないのだから。

私は、真面目な場面で駄洒落を言ってみたくなって、それをかみ殺すのに苦労することが結構ある。
会社の会議とか、食事会でとか、全然面白くない、口に出すのも赤面してしまうほどにつまらない駄洒落をかましてみたくなるのだ。
場が凍りつき、私の印象が最低になり、プライドもずたずたになるということは、言うまでもなく分かっていることだ。

だから実際にはやらない。
そこが、本当に病んでいる状態にまで進んでしまったひととの違いだろうと思うけれど、言い換えれば両者の違いは、実行するかしないか、たったそれだけのことというきわどいところである。
人は誰でも、危ない状態に陥る可能性を秘めているのだ。
私も、いつ「いただきマウス」と、大声で言ってしまうか怖くて仕方がない。

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