マンボウのこと

水族館は、この世で一番素敵な施設だと思っている。
動物園も、博物館も、美術館も映画館も大好きだけれども、みんな束になってかかってきたって水族館にはかなわない。
言うまでもなく、あくまで個人的な趣味嗜好の話である。

地球の70%以上は海であり、深海に至ってはいまだ2%しか解明されていないという海。
恐竜がいた頃から姿を変えないで今もどこかで生きているのではないかという太古のサメや、海底火山の噴火口で生きる真っ白な蟹など、まだまだ謎に満ちている海。
宇宙と同じくらい未知で神秘的な海の、たった一端にでもふれられる水族館は、いかに人為的であったとしても憧れのスポットなのである。

そんな水族館で見られる海の生き物でダントツ好きなのはサメであるが、同じくらい魅力を感じるのがマンボウである。
「太陽の魚」といわれるような陽気な形をしたマンボウは、何かにぶつからない限り方向転換ができないという話だ(本当だろうか)。
だから水族館のマンボウの部屋には、ガラスの内側にビニールでガードを作っている。
そうしないとガラスにぶつかってケガをするらしい。

そんな不器用ともいえるマンボウに、私は親近感を覚えるのだ。
ドンくさい感じが身近というのもある。
そして、魚とは思えない不可思議な身体をしているところも興味深い。
けれども何より一番の理由は、私の姉の子供の頃のあだ名が「マンボウ」だったこと。

これを姉に言うと、今でもすごく怒る。
確かに自分につけられたあだ名が「マンボウ」はちときつい。
どうしてそんなあだ名がついたのか聞いても、本人は「分からない」と空惚けている。
多分、壁にぶつかるまで気づかないくらいにぼんやりしていたからじゃないの、とぬかす。

でも私は、おそらくマンボウを正面からみたときの顔が、姉の顔に似ていたからではないかと踏んでいる。
マンボウがものに衝突するという性質を持っているからなんて、そんなウィットに富んだあだな付けを子供がするだろうか。
ということで、私はそう勝手に解釈しているのだが、そうなると姉と血が繋がっている私も、おそらくは「マンボウ」となる要素を持っているのだろうと気づく。

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